投稿作品
東條康江さん・・・青松園の歌人です。 政石 蒙さん・・・青松園の歌人です。
ー形見の鉢ー

内縁に据え置く盲友の形見なる観音竹にお早うと我

枡方のおっちゃんお早うと声をかけ夫は水やる観音竹に

睦まじき夫婦の暮らし見習へと観音竹は我らの師匠

山畑で手塩に賭けし大蕪夫は三杯就漬になしおり

白菜も葱もわが畑で取れしもの遠来の友らと鍋囲みおり
ー日本人捕虜基地ー

モンゴルに赴く首相日本人捕虜墓地に参詣為すやなさずや

飢えと寒さ重労働に力尽き斃れし捕虜を葬りたる墓地

凍てつきて墓穴掘れぬ冬のため春から夏に掘りて備へき

靖国に参詣なすもモンゴルの捕虜墓地に詣でぬ小泉首相

在りし日の小渕首相がモンゴルの日本人捕虜墓地詣でしを偲ぶ
松浦篤馬さん・・・青松園の歌人です。 山本登志子さん・・・大坂の歌人です。「黒曜座」50号より。
ー父の忌ー

日焼けして黒く痩せたるみ顔顕つ六月二十九日父の忌

五十五歳にて逝きし父か極貧の家守りわれら七人育てて

梅雨暗く降れば顕つなり胃癌手術半ばにて突如逝きしわが父

父の柩帰りたりしよ己が刈りし麦積みてうす暗き家に

二十歳にてわが家に養子に来し父かただ働き三十五年後に亡し
ー沖縄・喜屋武岬にてー

喜屋武岬に血の花咲けり鉄の雨に撃たれ追われて身を投げし者等

慟哭の声が響きぬ海の底の白き遺骨を波動は削る

月桃の花が揺れ居り六月の雨を吸い込む御霊の泪か

遺骨なき墓標の並ぶ沖縄に今日も飛び交う米軍のヘリ

去る生命生まるる生命・生と死が行き交う宇宙に我も住みおり
機関紙「青松」第622号掲載

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