|
|
|
|
|
庭の花畑 東條康江さん・・・青松園在住 「青松」626号所収 |
|
■ 高潮に浸かりし庭の花畑三年ぶりに甦りたり
■ 日当たりの良き花畑に植えつけしフリージアの芽出で初めにけり
■ フリージアの命逞しニョキニョキと花壇の隅に芽を伸ばしている
■ 花畑に球根うずめ芽の出るをまだかと待てる日々は楽しき
■ 庭先の花壇に植えしチューリップ花の咲く日をひたすら待てり
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
顔面痛の妻 松浦篤男さん・・・青松園在住 「青松」626号所収 |
|
■ 心臓移植さえ叶う世に顔面痛止める薬なく妻の苦しむ
■ 看護婦厚き療園ゆえに無地過ぐか顔面痛にて衰弱の妻
■ 部屋の中歩けるがせめてもの救い顔の疼痛に身の弱る妻
■ 病み弱り常臥す妻に希望湧く今日は三度の飯を余さず
■ 長病めど意外に太き妻の足癒えて旅ゆく夢なお捨てず
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
猪突猛進 政石 蒙さん・・・青松園在住 「青松」626号所収 |
|
■ フセインの死刑執行を一面に大きく報じ新聞歳暮
■ 年男なれども猪突猛進はわれに適はずゆるゆる歩まむ
■ 大正に生れしわれは無謀なる猪突猛進を戒められき
■ 憲法の改悪に猪突猛進は真っ平いかに首相力めど
■ 他国への侵略に猪突猛進を重ねし過去を忘れ給ふな
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
蝋 梅 桜こと羽さん・・・大阪在住 「くれない」57号所収 |
|
■ 障子戸を繰れば小さく庭すみに今際の母の身たる蝋梅
■ 葬の日を裂きて匂ひし蝋梅にめぐり会ひたり母三回忌
■ 蝋梅の花の彩り纏ひたる母の棺の舟発ちませり
■ 装ひて三途の川を渡る日の母うつくしき蝋梅匂ひ
■ 如月の母の忌日を知らせむと蝋梅咲けりかの日のやうに
■ 蝋梅の花の一樹に足を止め見上ぐる人らの中に加はる
■ たらちねの肌のなつかしみ透きとほる蝋梅の花を掌につつみおり
■ 目を閉ぢて蝋梅の香を聞くせつな今際の母の貌の顕ちくる
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
掬い取る水面 山本らつさん・・・大阪在住 「黒曜座」52号所収 |
|
■ 玻璃の器に光集めて眺めいる老い深む目に華やげる魂
■ 誰人も老い来る日をは待ちはせぬ水蜜桃をかじりたき日よ
■ 我が顔を揺るる水面に写し見る乙女の面影ありやあらずや
■ 掬い取る水面に移る己が顔の老いて崩れしほほの一部を
■ 三人の子等を産みたるこの街に立てば聞こゆる誕生の声が
■ 五つ並ぶ骨壷の中それぞれ生きたる証つめこまれており
■ 「雑草のように生きよ」と若き日の我にくれたる母からの手紙
■ たったひとつ残りたる歯を愛しみて入歯拒否しぬ母の想い出
■ 人間にたとえて見れば百歳か茎まで枯れいる白ゼラニウム
|
|
|
|
|
|
|
Copyright © 2006 各作家さま all rights reserved.