投稿作品
着陸  東條康江さん・・・青松園在住     「青松」646号所収
追い風の余りに強く着陸できねばジェット機上昇したり
風向きの変わるを待てる空のうえ無事着陸を希い祈りぬ
雨風のはげしき中を滑走路に車輪つきたり太き息吐く
握力の衰えぬよう訓練機の張りたるゴムを握りに握る
根気よく訓練したる甲斐ありて握力徐々に戻りてきたり
変貌の古里の山   松浦篤男さん・・・青松園在住     「青松」646号所収
行き行けど杉ただ茂るのみ伐りし跡なし過疎進む古里
金肥やり育てし杉の繁茂すれど売れぬ世となり不況のつづく
古里の山低く見ゆるも丈高く覆ひしゐし松残らず枯れて
尾根の松枯れて古里の山みすぼらし麓の杉は黒く茂れど
生徒数五百の小学校がいま閉ざす杉売れず過疎進みつぐ古里
忘れ難し   政石 蒙さん・・・遺作     「青松」646号所収
モンゴルの野の隔離小屋に灯りなく夜毎狼の遠吠えを聞けり
死にたくも死に得ぬわれと対き合ひてモンゴルの野の隔離小屋の日々
日本人捕虜の死体を解剖なす小屋に隣れるわが隔離小屋
死体置場を兼ねし解剖小屋に朝々亡骸運び込まれつ
亡骸の溜れば解剖し荷車に摘みて墓地へと野を運びゆく


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