投稿作品
  東條康江さん・・・青松園在住     「青松」658号所収
この冬の厳しき寒さによく耐えてチャペルの紅梅ふくらみて来し
丘の上のチャペルに咲ける紅梅の蕾ふくらみ咲く日まちおり
礼拝に丘をのぼれば紅梅の蕾ほつほつ咲きそむと夫
礼拝をおへて出ればほのかなる紅梅の香の漂よいており
山畑に夫の植えたる梅の木の花はましろき満開ときく
   松浦篤男さん遺歌集(5)・・・青松園     「青松」658号所収
海の青靄にうするる彼方にて水島に黒く煙立つ見ゆ
麻痺の手に握る切符をいく度も眼に確かめつつバスにゆらるる
さわだちて鳴門の潮の落つる見ゆ春たけなはの日を反しつつ
杉木立に鈴ひびかせて登り来し一団がご詠歌唱へはじめぬ
うす暗きみ堂にありてさまざまに人の言ふ声清しく聞ゆ
   政石 蒙さん 遺歌集(12)・・・青松園     「青松」658号所収
一日の大方は児らにかかはりゐて夜更けの机にひとりを守る
声あげて泣き得る幸をあどけなき少年はもちて園に入り来し
顔面を病む幼児はひとみ白くひらきて眠りなほあどけなし
寝いばりの朝もこの児は素直に畳のしみにわれは笑ひぬ
少年は足の汚を気にしつつおひなさまの前の畳に座る


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