投稿作品
山畑の幸  東條康江さん・・・青松園在住     「青松」660号所収
山畑に育ちつつある実豌豆むくどりにみな食べられにけり
山畑は夫仕事場夏野菜実りて友に喜びもらう
朝ごとに完熟トマト食しる我今日の健康守られており
焼茄子のあまき香りの漂いて我が食卓に満るしあわせ
初生りの西瓜我が手に触れさせてくるる夫の心かよへり
   松浦篤男さん 遺歌集(7)・・・青松園     「青松」660号所収
障害年金貯めきて背広購ひぬくにへ帰らむ願ひを秘めて
潮騒をうつつに聞けりふるさとの山吹き抜ける風とまがひて
古里に行くこの道も車ふえバスは崖端にしばしば停まる
杉林の影のぶる棚田の一枚に苗代たちて水ひかり見ゆ
塗りたての苗代の岬にはりつきし桜の白き花の幾片
   政石 蒙さん 遺歌集(14)・・・青松園     「青松」660号所収
暁方の冷えに目覚めて寝乱れし児らの姿をしばらく見てゐる
図書室のドア開けしとき孤りゐし少年があわてて雑誌を閉ぢぬ
流行歌うたひつつきし少年が我をみつけて顔を歪めたり
うしろより足早にきて言葉なく傘よせくれしひとりの少女
死にたしと言へる少女のかたはらに阿呆のごとく我はたりゐき


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