投稿作品
足の訓練  東條康江さん・・・青松園在住     「青松」668号所収
手術うけ足にふたんのかからぬよう夫はベットを求めくれたり
半月板入れ替え膝の良くなりてひたすら歩く訓練をなす
先生とうでくみ歩くリハビリ棟今日の日課をせいはする我
黄の色が珍しいとて生れ日を祝いて賜うカトレヤの花
賜りしカトレヤの鉢おおきくて部屋にはおけずチャペルに捧ぐ
   松浦篤男さん 遺歌集(15)・・・青松園     「青松」668号所収
甘藷畑つづく高処の一区画蕎麦の花白く雨に濡れをり
杉林も棚田も故郷に似てしたし霧島のふもとの村を行きつつ
霧島の嶺近づけば山をこめし霧明るみて硫黄匂へり
異人邸の庭に立ち見れば新造船泊つる長崎の入江は深し
入りて来し原爆資料館に眼にとまる十一時指ししままねぢれし時計
   政石 蒙さん 遺歌集(22)・・・青松園     「青松」668号所収
香りよきコーヒーをのみ春宵の街にまぎれてゆきたき心
ブランコのほかになければ檻の猿終日のりて怠屈げになり
透明のガラスめぐれる屋のなか春は造られむるる春の香
岸肌に滲める水を樋にあつめ盗むがごとく掌にうけてのむ
裾をからげたらひのものを踏み洗ふ女忍従に馴れし顔して


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