投稿作品
紅梅  東條康江さん・・・青松園在住     「青松」670号所収
教会の庭の紅梅ふたつみつ咲き初めしとど夫いいくるる
寒風に耐へて咲きたる紅梅に白杖とめしばし佇ずむ
寒風に耐へた紅梅「私くしをみてよ」とばかり咲き競うなり
礼拝を終へ帰る道夫と腕くみて下りぬチャペルの丘を
訓練師もう100メートル歩きましょう記録のばして歩調あわす
   松浦篤男さん 遺歌集(17)・・・青松園     「青松」670号所収
亡き父の使ひ古しし木の鍬を竹藪の芥の中に見出でぬ
わがかけるラジオを厭言ひし父それより三日を経ず逝きし父
煤けたる天井仰ぐわが不治の病が父母を早死させし
煤けたるこの天井の下に病み籠りし十余年も遠くなりたり
人を世をただにうとみてこの納屋に病みし十余年夢の如しも
   政石 蒙さん 遺歌集(24)・・・青松園     「青松」670号所収
死籖の最終番に当りし君七人の仲間に先がけて逝けり
一度もみなに触れず逝きたれば屍といへど羞恥を湛ふ
告別の言葉書き了へ戦すみたるあとの如く疲れをり
友の死を悼みて書きし僅なる稿料をもらふ汗を拭き拭き
死ぬまではやれぬと君の渋りゐし万年筆のその後を知らず


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