投稿作品
祈りの力  東條康江さん・・・青松園在住     「青松」672号所収
祈りしか出来得ぬ弱き我なりきされど祈りは力源
渇きたる大地に恵みの雨降りて人も草木も息づきにけり
今日一日腹を立てずに過さんと思いおりしに声あらげたり
十五歳のおさげ髪にて入所せし我が人生をききてもらいぬ
おしゃれなる帽子身につけ颯爽と膝の受診にナースと来たり
   松浦篤男さん 遺歌集(19)・・・青松園     「青松」672号所収
階段があればひとまづ立ち止まる眼の見えぬ友の手を引く慣ひに
人混みに入れば歩みのぎこちなき盲の友を声にはげます
右見ても左を見ても欠くるなき五体を持てる人ばかりなり
穫り入れに舟漕ぎゆきしといふ水路せばめて青き水草茂る
杉林出でて明るむ山間に刈株くろき湿田つづく
   政石 蒙さん 遺歌集(26)・・・青松園     「青松」672号所収
ひと去りしあとの座布団凹みゐて苦き話を反芻しをり
麻痺したる指を茛にて火傷して気をつけながら今日もやきたり
下駄履けぬ足となりゐて晴れし日もゴム長はきて何処へでもゆく
人間を型どりし菓子の足を食ひ頭を喰らひ胸わるくなる
小さなる命を終へしカマキリが塵と一緒に掃捨てらるる


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