|
|
|
|
|
虫の合唱 東條康江さん・・・青松園在住 「青松」679号所収 |
|
■ 里帰りできず留守居夫いとし我は看護婦に伴なわれ帰りけり
■ 夫の肩かりトイレに導かる杖つきし夫有難きかな
■ 藍染の余所行の服賜わりて我れ大切に着かせ賜わん
■ 窓の外虫がしきりに鳴きをれど夜の白みそむ頃鳴きやめり
■ 難聴の我を窓辺にいざないて虫の合唱聴かせくれけり |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
松浦篤男さん 遺歌集(26)・・・青松園 「青松」679号所収 |
|
■ 呉服店の勤め脱け出てきし(徳島にて)妹と時計を見つつ公園にをり
■ 認められぬままに子を産み五年経て妹のやうやう落着きてきぬ
■ 入所の時我を励ましくれし手紙束ねて引越しの荷の中に入るる
■ リヤカー一ぱいがわが荷の全てにて決められし部屋に今日移りゆく
■ 新築の寮の木の香に涙出づ三十年の病に耐へきて |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
政石 蒙さん 遺歌集(33)・・・青松園 「青松」679号所収 |
|
■ 編集室まへの柳に秋日ひかり無休の百日やうやく過ぎぬ
■ 秋の日は海に溶けつつ色を増し汝の来る日のほど遠からず
■ 酔ひどれが女追ひゆきししばらくは土堤に沿ふ萩暗くそよげり
■ 台風の近づききたり白萩も柳もふるふ日の落つるころ
■ 一様に海に対き立つ墓碑群の陽にひかりつつ丘はしづまる |
|
|
|
|
|
|
Copyright © 2006 各作家さま, all rights reserved.