第1部 光を求めて
第2章 脱 皮(昭和26〜34年)
8 点字を習って 田 頭 鶴 弘
杖の友会では希望者を募って点字講習会を行なうことになりました。希望者は40名程ありましたが、手指の良い者は僅かに3名でした。
ハンセン病盲人の場合は知覚麻蝉があり、点字を習うといっても普通の点筆は使えませんので、大工さんに頼んで、使いやすいようにペン軸をつけてもらいました。
最初は、3台の点字器で、打つ練習から始めましたが、点字器のマスが非常に小さく感じられました。それが馴れるに従って次第に広くなり、マスの中の一点、三点、四点、六点はたやすく打てましたが、二点と五点はとても打ちにくく、点筆を真っ直ぐに持っていないと、点の所に当っていてもアナがあきにくいので困りました。晴眼者の加藤さんが点字にくわしいことから、1週間に1度、指導してくれております。
点字器が受講者全員にゆきわたったのは、その年の9月上旬でした。それからは、みんなで揃って、一点から六点までのメの字書きを行ない、続いて、アイウエオの五十音を習いました。初めのうちは手が思うように動かず、左へ打ち進むに従って定規がよくはずれて困りました。先日は、文章を打ってみましたが、マスをあける所をあけなかったり、打った所へ2度も打ったり、とばしたりして、なかなか思うように書けませんでした。
そして、読む方は10月から始めました。隣りの部屋の松本さんがレントゲンのフィルムをもらってきて、五十音を打ってくれたので、唇や舌でさぐってみましたが、ただ一面に凹凸があるのみで一宇も読めません。しかし松本さんは指に感覚が残っており、晴眼者の加藤さんからもらった点字の手紙を、20分ほどで読んでしまいました。
点字の文法は、まだ半分ぐらいしか習っていませんが、その複雑さには驚いています。盲人にとって点字は、私たちの文字ですから、努力して一日も早く文章も書き、読めるようになりたいと思います。
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