第1部 光を求めて
第2章 脱 皮(昭和26〜34年)
16 三園点字競技会 滝 本 サトエ
この瀬戸内三園点字競技会は、昨年7月長島で開催されました三園盲人協議会に、大島から議題として提出したものです。この議案には長島、邑久も何の異議もなく、賛成を得て成立し3000円程度の経費で、三園の当番制ということで決まりました。
そして、昨年の9月、邑久盲人会の担当で第1回が行なわれました。今年は大島が受け持つことになり、経費も認められ、邑久での競技要項を参考として、競技種目及び規定を次のように作りました。
競 技 種 目
一、タイプ早書き早読み
一、早読み
イ、舌読(唇読を含む)
ロ、指読
一、メの字書き
イ、普通点筆
ロ、改造点筆
一、暗誦書き
イ、普通点筆
口、改造点筆
競 技 規 定
一、競技時間
イ、暗誦書き……5分
ロ、メの字書き…5分
一、失 格
イ、暗誦書き……5文字以上
ロ、メの字書き…5文字以上
ハ、タイプ………7文字以上
(いずれも誤字、マスあけを含む)
一、減 点
イ、暗誦書き メの字書き……1つに付き1点
ロ、タイプ……マスあけ5秒、誤字10秒を加算
一、ストップウォッチを使用のこと
一、1人2種目参加
以上の要項で募集しましたところ、長島・13名、邑久・12名、大島・11名の参加者がありました。その人数に合わせて、メの字書きの普通点筆は用紙の右肩、改造点筆は左肩、暗誦書き普通点筆は用紙の右下、改造点筆は左下、タイプ競技は用紙の上中央に、それぞれ盲人会の印を捺して競技用紙を作り、タイプ、指読、舌読の文章は、点字高等国語2年下の「炭焼きの娘」から抜粋し、両盲人会に発送しました。
締切りは6月30日にしていましたが、大島の場合、会則の改正が予想より手間どり、どうしても日程がとれず、点字競技会はとうとう7月3日になってしまいました。この日は32度という暑さの上に、すぐ側の大島会館建設工事の音がもの凄く、集ってきた参加者はうんざりしていました。
そんなハンディキャップの中では、成績は二の次で、早く済めば良いという雰囲気でした。それでも、参加者は暑さと機械の騒音を克服し、熱心に競技が進められました。私は、問題の選定に当りましたのでメの字書きだけに参加しましたが、改造点筆をしゃんと握れず、親指と人差指の間にはさんで点筆の軸を頬で支え、聴覚をたよりに書いていくのです。顔の汗が用紙の上に落ち、点筆の音が聞こえないので、書けたのか書けないのかわからず、探っているうちにストップがかかってしまいました。また、山藤さんは点筆を手にくくり付けて参加しました。こうして、早く書ける人だけでなく、一人びとりがグループの和を深めるため進んで参加しております。幸い早書き競技を5分間とし、全員が出来る方法をとりましたので、全競技を1時間足らずで終了することができました。まだ時間がありましたので、長島、邑久から送られて来ている競技模様のテープをみんなで聴きました。
翌日から、世話係によって慎重な審査を行い、肉眼であやしいと思うところは舌読や指読でもしらべて判定しました。
審査の結果、競技の成績は次の通りです。
メの字書き普通点筆
一等 邑久 村林仁造
二等 長島 川上安成
三等 長島 朝川信夫
メの字書き改造点筆
一等 大島 松野鏡子
二等 邑久 田端 良
三等 長島 伏見次男
暗誦書き普通点筆
一等 長島 川上安成
二等 長島 朝川信夫
三等 邑久 藤原作夫
暗誦書き改造点筆
一等 長島 近藤宏一
二等 大島 小島しげよ
三等 大島 松野鏡子
早読み(舌読)
一等 邑久 橘 みよし
二等 長島 近藤宏一
三等 大島 小島しげよ
早読み(指読)
一等 邑久 三上 久
二等 邑久 辻岡 清
三等 長島 村瀬広志
タイプ競技
一等 邑久 三上 久
二等 邑久 橘 みよし
三等 長島 松岡英樹
この入賞者には、一等・70円、二等・50円、三等・30円の賞金と、それに副賞として点字用紙20枚、また入賞者以外の人には30枚を参加賞としておくりました。
7日には会則も出来上り、総会が行なわれました。その日は完成近い盲人会館の備品としての扇風機が届き、その涼しい風を受けながら、あの暑かった7月3日の点字競技会を思い出していました。
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