第1部 光を求めて
第4章 飛 躍(昭和43~50年)
28 予算化された盲人教養文化費 今 井 種 夫
全盲連が昭和36年より運動を続けてきた盲人教養文化費の予算化が、42年ようやく実現をみるに至った。その内容は、視力障害一、二級者の約半数809名に、トランジスターラジオの個人貸与、各盲人会に会務用としてテープレコーダー2台、テープ24本、点字図書10冊の購入費660万円である。これは、私たちの10年に近い運動の集積と各関係者のご理解によるもので、その意義も喜びも大きいものがある。
しかし、この度のトランジスターラジオの示達単価が7,255円という低いものであったし、交直両用の性能をもつ品でありながらACアダプターの附属品がはずされていたため、FM放送を聴くには電池の消耗が甚しく、その維持費も私たちの負担となっている。また会に示達されたテープレコーダーにしても、示達単価が25,000円では小型のものしか購入できなかった。そこで、43年度にはこれらの示達単価の引上げを行なってもらうと共に、ACアダプターを支給してもらえるよう、本省及び関係方面に要請を続けていた。
だが、それにもかかわらず、今回の予算復活折衝における第一次内示では、全く無にひとしい額が示されたのであった。この教文費は、42年度からの継続予算であり、私たちにとって如何に切実なものであっても、十分実状を知ってもらえない大蔵省において、大巾に削減されたことは意外であり、理解しがたいことであった。このような事態を招来したことについては、厚生省の約束に頼りすぎ、大蔵省への慟きかけが十分でない面があったのではないか。この苦い体験を再びくり返すことのないように、関連機関への働きかけを行なわなければならないことを痛感した。幸い、第二次、第三次と復活折衝を重ねた結果、ACアダプターに代えて乾電池を含む盲人教文費834万円が認められることになった。
ここで今一度、私たち盲人の生活の一端を記しておきたいと思う。失明した当時は悲しみにうちひしがれ、生きる望みも失ないがちであるが、それを乗りこえ、人間として少しでも生き甲斐のある人生を送りたいという気持から、舌に血をにじませながら点字を習得したり、短歌、俳句、川柳などを作ったりして、それぞれの生活を豊かにするために努力している。盲人会でも、各サークル活動が活発になってきており、これに必要な点字タイプライター、テープレコーダー、その他の物品を、自治会や篤志家の援助によって、曲りなりにも補なってきた。
それに最近は、点字図書に並ぶものとしてテープ図書の利用がさかんになり、日本ライトハウス、日本点字図書館、その他各県図書館などにも、こうしたテープ図書が備えられるようになった。私たちの場合、知覚麻蝉のため、このテープによる読書に対する期待は大きく、会員の要望に応えて、日本ライトハウス等からテープ図書の貸し出しを受けているが、会員の希望は広範囲にわたり、もはや1台や2台のテープレコーダーでは、その欲求をみたすことが出来なくなってきたところから、本省に要請し続けて、やっとこの教文費の実現に至ったのである。
教文費は43年度以降も続けて予算化してゆくと、厚生省では言明されておるので、次年度にはテープレコーダーの個人貸与を是非計画していただき、私たち盲人の療養生活を明るく豊かなものにしてもらいたいと願っている。
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