東條康江さん・・・青松園の歌人です。 |
・・・歳逝く・・・ 穏やかな天気喜びキリストの降誕祝い礼拝守る 馬小屋の馬槽の中に生まれましし主イエス我は畏み祀らん キリストがチャペルの頭なればなり夫も妻の頭と宣う 大晦日なれど夫は山畑に耕運機かけてくると出てゆく 白菜も葱も夫の作りたるもの食べらるる我の幸せ |
松浦篤馬さん・・・青松園の歌人です。 |
・・・空白の数分・・・ 人命のはかなさ神秘さ実感す数分なれど意識の失せて 是非成しておくべき気付かされぬ数分なれど意識の失せて 代筆に作歌に更に励まんかかにかく意識戻りし幸に 殊更に木々の緑が新鮮に見ゆるも哀れ意識戻りて 不具の身も八十歳を超え生くか意識失すれどまた救われて |
政石 蒙さん・・・青松園の歌人です |
・・・歳月・・・ 療園に五十八年生くる間に父姉四人兄を逝かしむ 父の齢を十も越えしよ療園にわれを見送り間なくし逝けり 鳴り止むとせぬは地虫か耳鳴りかいのち崩るる音かも知れぬ 親殺し子殺し自殺友殺し暗き話題に始まるテレビ 侵略の戦なりしを肯はぬ新しき首相生まれむとする |
機関紙「青松」第623号掲載 |
山本らつさん・・・大阪の歌人です。「黒曜座」51号掲載。 |
・・・男の朗笑・・・ ざんぶざんぶと波は揺れおり瀬戸内の浜は祭りさ魚も踊れ 港を出る船は旗あげ賑やかに今日は祭りだ大漁なるぞ 大漁旗かかげて進む船たちの帆に立てる男の朗笑 名も知らぬ海鳥たちの波に揺らる母の腕に抱かるるごと 船の辺にまつわりつける白浪の潮の香吸いて吾も海なる 波よ波 砕け飛び散れこの地球の生命の水となりて溶けゆけ 我が魂の中に潜みし濁りゆへ白浪と化して海へ返さん |
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