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身柄預けて 東條康江さん・・・青松園在住 「青松」634号所収 |
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■ 腰痛に悩まされおり七十路も半ばなる身のたがゆるみしや
■ 鍼灸師に身柄預けし甲斐ありて腰の痛みの和らぎてきぬ
■ 鍼治療終えたる後は温灸によりて仕上げをなしくるるなり
■ ぬくもりの腰に拡がり心地よき温灸治療に腰痛の癒ゆ
■ 腰痛のようやく治りたる日々を白杖つきてリハビリ通う
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夢の出会ひ 松浦篤男さん・・・青松園在住 「青松」634号所収 |
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■ 列車着く度に目立つ出口に立ち初に訪ひ給ふ君をひた待つ
■ あまりにも遠き地ゆゑに諦めゐし君と今日は遇ふ短歌の縁に
■ 浜の道連れ立ち歩くも文通をしつつ一度はの願ひ叶ひて
■ わが住まふ瀬戸内の景褒め給ふ君案内する義肢の軽しも
■ 初の君に詣でもらふも病み隔離の果て身内にも放置されたる霊を
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現今世相 政石 蒙さん・・・青松園在住 「青松」634号所収 |
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■ 働きの鈍くなりたるわが脳の珍しや今朝は歌数首生す
■ 稀なりし尊属殺人も現今は子殺しが流行りの如し
■ 不祥事のやたらに多く責任者並びて頭を下ぐる景も見飽きぬ
■ よくぞ辞めてくれしよ憲法改悪が旗印しの首相突如退く
■ 最後までめぐり騒がせる退き熊の不様さよ戦後生まれの首相
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朝明の足 桜こと羽さん・・・大阪在住 「くれない」66号所収 |
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■ カレンダーの余白を予定で埋めゆくクロス・ワードを解きゆくやうに
■ 花かごに盛るコスモスに教わりし人のこころの二色三色
■ 陶工の祈り思はめひだすきの色まさりゆく朝焼けの雲
■ 朝顔の日ごと小さく咲く秋の朝明の足が指先より冷ゆ
■ ハヒフヘホ知覚過敏のスイッチがたちまちに入る焼き唐辛子
■ やや臍の曲がる南京くりや辺に切るさへ惜しき仲間とし置く
■ ぼんやりと見えてゐたのは犬のふん老いる眼をかなしむなゆめ
■ 一瞬の風を捉へて起きあがり舗道に円を描く落ち葉たち
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人間行路 山本らつさん・・・大阪在住 「黒曜座」55号所収 |
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■ 夜ごと歌ふ恋猫の声艶めきて月も染まりぬほの字の色に
■ 恋をする猫の心に潜りこみ恋歌うたふ屋根の上にて
■ 初夏の空に広ごるゴーヤーの葉は実を太らせむ太陽を吸ひ込ませ
■ ゆうべ散るゴーヤーの花に眠りゐるなめくじの子よ捨ててもよいか
■ 無花果の葉よりこぼるるひとつぶの露に映れる空の青さよ
■ 人留めの札の立ちたる山道にゆらり揺れゐる鬼百合の花
■ 風に乗り数多の山を越え来しかベランダの鉢に咲くタンポポよ
■ 濃き紅の花びらとひとつ唇に含むほのかに薫る梅の生命露
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わたしのイーハトーヴ 大坪 冨美子・・・北九州在住 |
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■ いまさらに短き君が一世かな苔むす詩碑の背を撫でやる
■ 漸くにめぐり逢ひたる君かとも風のマントは高原に舞ふ
■ つめくさの灯す明かりか調べはラルゴそぞろ心や賢治の祭り
■ 野の道に揺るる燈に宙をゆくポランの広場よ君が詩碑の前
■ 詩碑の前星空にゆけ子等の声「賢治先生のお祭りです」
■ 御覧あれ髪毛振り立てふるさとの鹿踊り舞ふ少年達を
■ 気を拂ひ土踏み鳴らす鬼剣舞刀煌めく賢治の夜を
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