投稿作品
留守居  東條康江さん・・・青松園在住     「青松」635号所収
夫出掛け留守居のわれは介護士の目を借りて朝餉いただく
寝苦しき一夜は明けて今日帰る夫を待つなり一人は寂し
先行きの一人暮らしはこうなのか思い見やれば心もとなし
先行きを思い悩むな主イエスと共に歩めば安けくあらん
ハミガキを口に絞りて歯を磨く健やかにして爽やかな朝
隠れ病みし日   松浦篤男さん・・・青松園在住     「青松」635号所収
膿にまみれ隠れ病みたる日も遠し癒え永らへて世視の世に偶ふ
不治の癩知りて食絶ち日もありき白飯の湯気に不図涙出づ
手の足の先より失せる病にも耐へきて不足なき世に偶へり
煙草断ち祈り給ひし父ありてらいの身で八十歳までわが生きたるか
これが世の常なるか寂しらい滅び五十年経て差別の非を問ふ
芽吹き  政石 蒙さん・・・青松園在住     「青松」635号所収
幹のみにされし海紅豆吹く日のための力を内に貯ふ
悉く枝剪りとられ幹のみになりゐし海紅豆吹き初めたり
無汗症われには辛く長かりし酷暑やうやう鉾を収めつ
軍隊に捕虜に療園と己が意志ならぬ流れに流され老いぬ
追ひ越して行くを許してゆったりと歩める人の背を見て歩む

わたしのイーハトーヴ  大坪 冨美子・・・北九州在住     
わたしたちも宇宙に家を造りますお寄り下さい賢治先生
逝きて早や六十余年年下の田の黄金波打つ賢治歓べ
地味薄く君が刻苦の稲たわわはて減反の世とはなりしぞ
敗亡も知らず逝きましし君在らばその詩如何に混迷の今
願ひしはよたかか星か眼差しのどこか寂しい君が肖像
うつむきつ地表と宙の往還を自在になせる賢治なるかな
こはそれか消しては書きしペンの跡君が泪の落ちざらめやも

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