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癒ゆる日を待つ 東條康江さん・・・青松園在住 「青松」645号所収 |
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■ 肛門の傍に出来たる太き黒子取り除かれてベッドに伏せり
■ 我の黒子を取りてくれたる皮膚科医師癌頑張ったねと労いくるる
■ 尿管を入れくるる医師に身を委ね恥じらいを捨て痛み堪えつ
■ 生まれしままの姿さらして治療受く傷癒ゆるまで我慢よ我慢
■ 尿管を入れて尿なす羞恥心捨ててひたすら癒ゆる日を待つ |
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白内障手術 松浦篤男さん・・・青松園在住 「青松」645号所収 |
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■ 容赦なく白内障進む呆気なく妻の逝きたる失意の日々に
■ 白内障進み新聞も読めずなり眼の見ゆる幸改めて知る
■ 不治の癩に罹り七十年白内障手術受けなほ生きなむとする
■ 別世界の如くに視界明瞭なり白内障手術の眼帯外せば
■ 身体まで軽く文書く白内障手術の成りて視力戻れば |
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妖怪現る 故 政石 蒙さん・・・青松園在住 「青松」645号所収 |
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■ 平成の世に妖怪の現れて侵略戦争を糊塗せむとする
■ 空幕僚長の立場をわきまへず危ふき思想を開陳なせり
■ 侵略の戦などとは濡れ衣とぬけぬけと言ふ空幕僚長
■ かの戦時兵を鼓舞せる言動とまがふ空幕僚長の言
■ 自衛隊内部に平和憲法を軽視の思想はびこる怖さ |
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雪降れこんこ 桜こと羽さん・・・大阪在住 「くれない」81号所収 |
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■ パキポキ音たつゐがに寒の朝の吐く息白く凝りてゐたり
■ 降る雪を天の手紙とたれぞ言ふおぎろなき空ゆ草書したたむ
■ 友の死を容れざるわれに冷たさを残して雪が手のひらに消ゆ
■ 夏に生れ冬の遊びを知らぬまま逝きし子がゐる雪降れこんこ
■ たらちねの乳の色なしふうはりと無縁仏の墓碑に雪積む
■ 幼日紙飛行機は雪解けの段段畑の風になりたり
■ 銀色に光るつぼみを見てしより木蓮の花の待たるる窓辺 |
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小夜鳥 山本らつさん・・・大阪在住 「くれない」81号所収 |
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■ 一羽帰る朝明の空のほととぎすわれの魂もつれ疾くゆけよ
■ 小夜鳥ひそかに鳴きぬ夢の中われの秘密をのぞきしゆえか
■ 「さようなら」あなたが言ひしこの五文字右へ左へこころ飛び交う
■ 二十年止まったままの時間を待つわれの心に刺さりし棘と
■ 春うらら風にさそわれ浮かれ行く恋う人の住む鈴鹿という町
■ 君の髪ゆらりゆらゆら風にゆれ吾がほほにふれる春の香をつれ
■ 春の野に君つ花はれんげ草われにふりむきこぼす笑顔よ
■ わが影の老いゆく姿を認めし日花を購い渋茶をのみほす |
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