投稿作品
山の幸  東條康江さん・・・青松園在住     「青松」651号所収
山の梅枝打ちなしてきし夫は今年も数多く実りくれよと
この梅の苗木世話してくれし人今は世に無き我ら見守もる
この枝に花咲き実るは六月の頃かと待つのはたのしき日々なり
山畑の冬の野菜の良くできて摂理の聖手聖名ほむべし
この野菜友に送れば喜びて感謝の電話長くかかれり
宝塚歌劇の席   松浦篤男さん・・・青松園在住     「青松」651号所収
不治の癩耐へ生かされて七十年宝塚歌劇の席に今日在り
宝塚の華麗なる歌劇今日は観る療園のわれら招く人ゐて
水族館をめぐる車椅子の人つづくわれに似し運命の人世に多し
車椅子の一団寡黙に見巡れり児童賑はふ水族館を
水族館の児童賑はふに力湧く老のみの園に常籠りゐて
   政石 蒙 遺歌集(5)・・・青松園     「青松」651号所収
小気味よきほどの暑さよ腹這ひて畳に汗を吸わせてゐたり
丘にきて納骨堂の石縁に背冷ゆるまで仰臥してゐる
心眼ひらけと君に祈りつつ一眼なりとも見えよと願ふ
君の眼の濁りの今朝は薄れをりひそかに顔を寄せつつ見たり
苦しみを頒ちて受くるすべもなく外出の君に靴を整ふ


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