投稿作品
遠方の友  東條康江さん・・・青松園在住     「青松」655号所収
長野より訪いきし人と昼食に夫の作りしうどんいただく
山畑で取れしキンカン珍らしく少しだけれど持ち帰り行く
車にて長野へ帰るかずこさん島を朝発ち午後八時着
日曜の礼拝に出て牧師よりキリストの愛聞くかずこさん
讃美歌を心いっぱい歌いたき思いを押さえ祈りておりぬ
   松浦篤男さん遺歌集(2)・・・青松園     「青松」655号所収
わが事は己が手にせむ明日のため麻痺したる手に軟膏を塗る
老が茶を注ぎゐる音に目が覚めて雑居の部屋の今日が始まる
黒き藻が朝の動きのままなびく春の明るきひかり透りて
春の日をまばゆく反す眼の下の波の反復に眩暈覚ゆ
石ぼとけ拝むともなく山に来て彼岸づとめの鐘を聞きをり
   政石 蒙 遺歌集(9)・・・青松園     「青松」655号所収
息はづませ登りたる丘のうへ暮いろ深き海見ゆるのみ
枯草のそそけて続く野の道にはるののげしの咲くかと思ふ
負はされし丸太に背を傷めつつ駱駝はつねに従順なりき
賢気に人間が駱駝を率いてゐる駱駝は人間に頓着しない
吹雪する道に駱駝はうづくまる生くるともなく雪をかむりて


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