投稿作品
遠方の友  東條康江さん・・・青松園在住     「青松」656号所収
故郷の友より来ると電話あり心ときめき明日待つ我れ
月一度書道ならうを夫忘れ吾も忘れいて内助はならず
約束の日時のメモを冷蔵庫貼りてもらいて我れ安堵せり
喜寿となり声も出にくく成りたるを唯ひたすらに練習するのみ
ようやくに歌詞暗誦し曲にのせ我は唄へりひたすら唄う
   松浦篤男さん遺歌集(3)・・・青松園     「青松」656号所収
山火事に黒く焼かれし潅木の中に小さきわらびのみどり
古びたる障子湿りて開けにくく島にこめたる海霧は動かず
昨日よりこめゐし霧の明るみし午後ひとしきり霧笛の聞ゆ
濃き霧のはれて薄日の射せる午後女木島の段畑青みきぬ
役員になるを厭ひてみな黙る部屋にたばこのけむりこもりて
   政石 蒙 遺歌集(10)・・・青松園     「青松」656号所収
酷寒を耐へし深毛は刈りとられ駱駝は骨ばりし躯を横たへぬ
美食する家畜の残しし硬き草を駱駝は喰めり刈りしごとくに
現身の若さを恃み死籖も抽きあひにけり集いの夜に
死籖の一番札をひき当てし君がとなりにへらへら笑ふ
救ひなどあらじと言へばたちまちにいきまく眼われに集る


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