投稿作品
失われた故郷  東條康江さん・・・青松園在住     「青松」659号所収
放射能に汚染されたる故郷に帰りて住まう日はいうか
捨てられて原っぱにのら牛となり草をはみいる牛のあわれさ
トラックに尻を押されて載せられし牛の鼻づらなでて泣く人
もの言えぬ牛にも心あるだろうと流す涙に別れを知るか
両陛下被災地めぐり御慰問お言葉かけて下される姿
   松浦篤男さん遺歌集(6)・・・青松園     「青松」659号所収
それとなく不治の病を告げられては歩みたりはたしかこの道
四国山脈遠くかすめられるそのふもといまだ帰らぬ故里があり
車窓より見ゆる農家のたたずまひ草葺屋根の残る少なさ
青く澄む流れはそのまま海につづき吉野加工さだかに見えず
シャツを着る我にすばやく寄りきたりボタンをかけてくるる童よ
   政石 蒙さん 遺歌集(13)・・・青松園     「青松」659号所収
靴を捧げひざまづきたる雛もありもっとも低きところに侍る
あわてて戸を閉ざしたる参観人を知らす低き声
ふるさとを離り病む児が野の鶏を小さき籠にい飼ひ馴らしゐる
冬の日もたjpそおい縁にううづくまりめじをに餌を与へる童
少年は足の汚を気にしつつおひなさまの前の畳に座る


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