投稿作品
山畑の葱  東條康江さん・・・青松園在住     「青松」661号所収
山畑に繁れる雑草取り除き葱を植えんと夫は耕す
雑草の除去にひと日を働きて手の指にまめをつくりおり
耕やしし山の畑に葱苗を植えくるる夫残暑の中を
畑仕事に手の荒れたる夫軟膏をナースは優しく塗りくれにけり
山畑で獲れし大根葱を入れ祝う雑煮は我が家の味
   松浦篤男さん 遺歌集(8)・・・青松園     「青松」661号所収
わがをらぬ四年に徒らに伸びし梨まばらに白き花をつけたり
庭を藪ふ松の木陰に汗拭きつつ草屋根崩えるわが家見てをり
赤きつつじ雑草のなかに散りてゐる継ぐ者のなきわが家の庭
向ひ嶺に夕日黄の色に照りをりてふるさとの家冷えまさりくる
八人の炊ぎに母の忙しかりし広き厨も今は使はず
   政石 蒙さん 遺歌集(15)・・・青松園     「青松」661号所収
一段と高きところに健やかな人ら並びて今日クリスマス
つぶら瞳をこの児らは未だ失はず健やかな人に恐ず恐ずとゐて
よろめきし我を支へしひとの手のあたたかなりき今も思へり
傘よせてくれゐる人に気兼して急げば松葉杖の乱れつ
軒場より庭木にかかるくもの糸陽の翳るとき見失ひたり


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