投稿作品
病と戦う友  東條康江さん・・・青松園在住     「青松」664号所収
乳癌手術うけたる同級生病と共におおしく生きる
生れ日にイチゴ食せよと送りきし近江の人の心うれしも
一口にあまるイチゴをほうばりて我が生れ日は幸せなりき
問いくれし高松の兄姉生れ日を祝い歌いて下さりにけり
問いきたる板野のナース我が足を摩りくれけり温き手を
   松浦篤男さん 遺歌集(11)・・・青松園     「青松」664号所収
真夏日に照り静まれる海の面をマンモスタンカーおし分けてゆく
旧盆と聞けば思はる藪はれをらむ父祖の奥津城
痩せやせし姿を今に思ふなり胃を病みつぎて働きし父
畑中に座りつつ麦を刈りし父それより七日の命なりにき
父の刈りし麦を軒下に積みしまま父を葬りき麦熟るれば思ふ
   政石 蒙さん 遺歌集(18)・・・青松園     「青松」664号所収
首吊りし男のことをある夜はわが身のごとくかなしみてゐる
樟の薪燃えながらしきり匂ひだち還らぬ友に思ひ及びぬ
夜の会果てて海霧の流れよる道かへりゆくさまよふに似て
海霧こむる夜の坂道にたちどまり煙草をすへば旅人めきぬ
酔ひみだれ足にとけたる繃帯を曳きつつ何か喚きてゆけり


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