投稿作品
健やかに  東條康江さん・・・青松園在住     「青松」665号所収
介護士の手を取らずして朝早く夫に風呂に入れてもらいぬ
週三度朝風呂に入る幸せを主よりの恵み感謝する我
手も足もザブンとつかり入る我にタオルに石鹸ぬりくるる夫
右膝の半月ばんの入れかへに町の病院へ入院す我
健やかに夫守られて畑仕事精出しくるる我の幸せ
   松浦篤男さん 遺歌集(12)・・・青松園     「青松」665号所収
この盆は父祖の墓処の萱草も刈りそけてゐむ弟帰りて
盆供養に丘の霊塔に集まりし人ら夕映の中にあかるし
物干竿松葉杖など持ちこみて雨戸支へぬ荒ぶる時化に
台風の荒れたる後を常のごと小豆島の辺に灯り連なる
日の射さぬ病棟の庭にうす紅の芙蓉の花がつぎつぎに咲く
   政石 蒙さん 遺歌集(19)・・・青松園     「青松」665号所収
拡げたるままに眠りし本のうへ死にちらばへる虫は小さし
物欲る手檻より長くのばしくる猿と握手がしてみたくなる
厠にもカマキリがゐてひそかなる我がひとときに対きて動かず
喉より抜きしカニューレが湯気だつと聞けば生身にふれし思ひす
カニューレに呼吸をたのむせつなさを詠める一首も酷しく評す


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