投稿作品
足の訓練  東條康江さん・・・青松園在住     「青松」675号所収
手術うけ足に負担のかからぬよう夫はベットを求めくれたり
手術うけ膝よくなりてひたすらに歩く訓練日課となせり
左手を師にゆだねつつ歩をあわす二〇〇メートル今日日課
我が足をパラフィン浴にひたしつつ傷の癒しをドクターに謝す
ざんぶりと湯舟にひたり手足のぶこの幸わせをありがとう主よ
   松浦篤男さん 遺歌集(22)・・・青松園     「青松」675号所収
葛茂る流れをはさみ山峡に沿ひて棚田の連なりてのぶ
低き峠越ゆれば明るく村ありて刈り残す稲に霜白く置く
新しきビルに挟まれ残りゐる田の稲架いたく貧しげに見ゆ
腿冷えて眠れぬ夜の汽車の窓静まる駅のつぎつぎに過ぐ
秋の日のこぼるる根上り松の下大村先生の船を待ちにき
   政石 蒙さん 遺歌集(29)・・・青松園     「青松」675号所収
途中にて疲れし我は残されて遠き紅葉もよしとみてゐる
生活にあれたる指にむかれゆく林檎の皮の白き内側
逢へばはや心疲るるかつがつの生活のさまをつぶさに聞きて
莨喫ふマッチをすりてくるるさへたまさか逢へば生命にひびく
みづみづと息づく汝をみつめつつ癒えむ希ひに胸灼かれゐる


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