投稿作品
雑詠  東條康江さん・・・青松園在住     「青松」678号所収
鎮痛剤服用を我が好まねば主の名呼びつつ足さすり耐う
移り来し新居のめぐり虫の声きけざるままに秋深まりぬ
園長と九十才の女とがデュエットなしてもりあがりけり
山畑に繁れる雑草取り除き夫は耕し葱をうえくる
賜わりし紅葉なしたる桜葉を聖書に挟み友を思えり
   松浦篤男さん 遺歌集(25)・・・青松園     「青松」678号所収
月面を初めて踏みし飛行士も着水のときの鮫を恐るる
天水を貯めて濯ぎし苦しみも忘られゆかむ水道成りて
隙間風容赦なく入るこの部屋に今年も冬を越す外はなし
言葉なく見つめてをりぬありし日の写真の母のいたく痩せたる
囲炉裏火にかたき干柿あぶりつつ食ひし思ひ出健やけき日の
   政石 蒙さん 遺歌集(32)・・・青松園     「青松」678号所収
我の書くもの読みくるる遠き人ひかりの如き言葉を賜う
挨拶のごとく頭を深く下げ露きららめく柳をくぐる
汗臭き患者農夫が胸に抱く籠に余りて金色の梨瓜
一日を誤植検べて乾く目にひかる薬を量多くさす
編集の夜は遅くまでともす灯に寄りきて舞へり黄蛾黄金虫


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