投稿作品
百周年の歩み  東條康江さん・・・青松園在住     「青松」680号所収
カリカリと頭蓋骨に穴をあけ溜まりたる血を管にてぬきぬ
カリカリと頭にひびく錐の音主の御名よびて痛みにたうる
心配をかけたなーと夫の声しみじみ我の心にせまり
三宅氏のあとを慕いて聖国へと歩みゆきたし主の名よびつつ
百年の歩を祝い礼拝をささげて祈る導きたまえ
   松浦篤男さん 遺歌集(27)・・・青松園     「青松」680号所収
壁も障子も畳も新しく匂ひたち移りし部屋に寝つかれずをり
遊ぶより術なき不具の身にあれど日和よければ心動けり
少女等の投げるは届かず(島の船更新)海に落つ新造船の餅投げはずむ
入りて来しあどけなき顔ひき緊まり準看生はプルスを数ふ
高く積む古材濡れて煤匂ふ寒過ぐる雨の止まず降りつつ
   政石 蒙さん 遺歌集(34)・・・青松園     「青松」680号所収
募りくる思ひ耐へがたく寄りゆけば盛あがりつつ夕昏るる海
見つむる目見返すひとみ蝉の声たかまりゆきてつひに熄(や)みたり
耐へ耐へし思ひくづれてあふれたる涙を拭ひ汝はわらひぬ
白き花こまごま裂きて夜を匂ひわれはひそかに愛をあたたむ
死ぬるまで離り住むべし起きいでてや夜香木の鉢を縁に持出す


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