投稿作品
   松浦篤男さん 遺歌集(28)・・・青松園     「青松」681号所収
散らばれる壁土しづめ毀されし家跡あかるく寒の雨降る
普請場に並べ干す板匂ひつつふるさとにわれ帰りし思ひ
潮干きて露はとなりし暗礁の黒々として寒の極まる
昨日より雨降りつぎて冬ぬくし島の一筋の道ぬかるみて
傷絶えぬ足にも真白く繃帯を巻きかへて新しき年を迎ふる
   政石 蒙さん 遺歌集(35)・・・青松園     「青松」681号所収
洗濯の手を止めてきく俄の死両手の泡を庭へふりきる(小見山和夫兄逝く)
生前を疎遠にありし人までも蹤かしめて靈車海に沿ひゆく
葬より帰りくるみち鉄骨のうへに働く人のまぶしき
焼けのこる義眼双手に掬ひとりふきかけてひそかに磨く
ふるさとへ帰る遺骨を送りきて花粉をこぼす松の下過ぐ


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