裸の私は
あほうのように笑い
道化のように身ぶりをして
お世辞も言い
冗談も言い
楽しかったような気がしていたひと日を
寡黙になって観る
あれは私ではない
私が演技をさせた人形だったと
今日という舞台で
私は
私の人形をせいいっぱいあやつって
すばらしい演技をして見せた
演技に出くわした人は
なんの疑いもなく喝采した
楽しかったようだと思ったのは
多分そのためだ
夜
きりっと覚めた中で
私のしたことは
一枚いちまいはがされて
裸の私はとても寒い
生きているという、私の生身はいやおうなく満干を受け止めて在らされています。 そして私は、かわいたときの痛みや満たされているときの喜びの中で、さまざまなことを考えますが、自分自身がいつも自分に見つめられる対象でありながら、表皮をひっぱがし骨の髄まで目になってもまだ見つくせない何かがいつも私を貪欲にむさぼりつづけさせています。そして、私はその箸を置くことのない貪欲な鬼のために詩を書きつづけることでしょう。
全44篇で、1980年に出版された第6詩集です。 「でじたる書房」より電子書籍として入手可能です。 ここでも随時ご紹介していきますので、お楽しみに。第5詩集「聖なるものは木」以降のもので、詩誌「黄薔薇」(永瀬清子さん主催)、「樫」(三木昇さん発行)、「戯」(扶川 茂さん発行)、「木馬」(麻生知子さん発行)に発表したものに未発表作品が収められています。
1978年8月30日、花神社発行。絶版 2007年9月5日、でじたる書房より電子書籍として発行。