詩と詩集の紹介
第9詩集 「未知なる知者よ」
「未知なる知者よ」より
バ ラ
それは
豊かな香りを発散させながら
遠い
遠い
ところから
流れつづけて来た内側の勢いに
おされおされ
もどかしげに
はなびらをおしひらく
ひとつの命
ひたすらに
咲き切ることだけを希っている
無防備な明るさ
盛りへとどこうとする
たしかな熱気
それは
ただ
ただ
咲き切ろう
咲き切ろうとしながら
いつのまにか
欠けはじめている
再販後記より
本書「未知なる知者よ」は左に(下記に)記しますように、
「いのちの川の流れの中で、いくたびも幾度も苦境に立たされ、世を憎み、自分の人生を嘆き悲しんだことがありました。しかし、そんな気持ちを詩に書いたとき、ああ、あれは私にこんなことを考えさせるために、私の運命をつかさどる師が、あの苦しみを味わわせてくれたのだ。あの苦しみがなかったら、またときには、飛び上がるような歓びの日がなかったら、私はこんなことを考えずに、またこんな思いを知らずに、ただ日を重ねるばかりであったことと、身の引きしまる思いが致します。」
と、初版の後記に書いてありますように、人生の中の大変な時期に書いたものと思います。
板前である作者は問われるか、その生を、そのなりたちを。
しかし、出来上がった料理こそ問われるでしょう。
私は常に問われる存在です。そして、この人生を問われ続けているのです。私の生存も、あとしばらくで終わりますが、私が生きたことは私の詩が証明してくれます。
読者の皆さん、幸も不幸も生きたことを証して終わることは素晴らしいことです。生きなかったら、幸も不幸もなかったでしょう。幸せだったと思うことも、不幸だったと思うこともできないでしょう。
生きて証した、そのことを喜びとして生き抜きましょう。
この詩集について
全40篇で、1988年に出版された第9詩集です。
絶版になっていたのですが、改訂版が再販されました。
また、電子書籍としてでじたる書房より入手できます。
ここでも随時ご紹介していきますので、お楽しみに。
メモ
初版・1988年6月18日、海風社発行。絶版。
改訂版・2006年9月18日、海風社発行。装幀・高橋啓二・・・主に京阪神で活躍をされている装丁家。
2007年11月10日、でじたる書房より電子書籍として発行。